男泣き、などという言葉がありますが、私は実際この目で男泣きする男の人を見たことがありませんでした。
もちろん、甲子園球場で泣きながら土を持ち帰る彼や、某道路でトラックに轢かれそうになりながらも「死なん!」と泣いた彼や、ガキ大将にいじめられて某ロボットに泣きつく彼なんかの姿はよく見ていますよ。
現実に存在する人間で、という意味です。
一番長いあいだ一緒にいた私の父がまず泣いたことのない男だったものですから、なおさらそう思ってしまうのかもしれません。
男の人って、いつ泣くんですかね。
そんな私の長年の疑問を吹き飛ばしてくれる人がついこの間現れたのです。
現れたという表現は間違いかもしれません。
その人は私の学生時代からの友人だったからです。
彼とは気ごころの知れた飲み友達で、よく朝まで飲みあかしたものです。
そんな彼から久しぶりに会いたい、飲もうと連絡があったのはついこのあいだのことです。
たまにこうして2人で飲みながら近況を話し合うのはいつものことだったので私は何も勘ぐることなく彼との待ち合わせの場所に向かったんです。
待ち合わせた居酒屋の椅子に座る彼は、確かにいつもの彼とはなにかが違ったんですが、それでも私は彼の胸の内を理解するまでにはいたりませんでした。
いつものように私が話をし始めても、彼はビールをちょびちょび飲み続けるだけで上の空。
あまりな態度だったのでさすがに聞いてみると、彼は重い口を開いたのです。
彼は私の大学時代の同級生で、私の友人でもある女の子と付き合っていたのです。
どうやらその子となにかあったらしいのです。
学生時代から彼と彼女、両方から相談されていた私は、「また何かあったの?」と軽い気持ちで言ったのです。
そしたら・・・・・・。
ええ。彼、泣いたんです。
号泣、というのでしょうか、ぼろぼろと涙を流しながらもビールだけは飲み続ける彼の姿は凄みがありました・・・。
彼はクールな性格で知られていて、私が知る限り彼が動揺したりパニックになったりするような人間ではないんです。
彼含め大学の同級生で卒業旅行にニューヨークに行ったのですが、携帯もない連絡とれない場所で3人がはぐれて迷子になったことがあるんです。
有名なイエロータクシーにばらばらに乗ったところ運転手にホテルの名前がうまく伝わらなかったらしく、3台のタクシーが連なってきてくれるはずが最後尾の1台が目的地のホテルでいつまで待っても到着しなかったんです。
まだ学生だったこともあって、ホテルで3人の帰りを待っている私たちの心配しようといったら女子は泣きだす始末だったのですが、彼は微動だにせず「運転手が聞き間違えたとしたら、似た名前のホテルに行ってるんじゃない?」とホテルのロビーから冷静に別のホテルに電話をしようとしていたんです。
彼は別に英語が話せるわけでもなく海外旅行の経験もありません。
ようするに、肝が据わってたんですよ。
どっしり構えるタイプの男子でした。
そんな、彼がです。
今私の目の前で泣きじゃくりです。
ようするに、振られたらしいのです。
私は彼に同情する暇もなく、ただただ驚愕するのみ。
日本男子たるもの人前で涙を見せるは恥としれ、なんて言われますが、実際目の当たりにしてみるとこれがまたいじらしいわけです。
泣きがひと段落した後は怒涛の愚痴トークのはじまりでしたが、彼の赤くはれた目を見ると無下にすることもできず朝まで優しく付き合った私でした。
男の人も、愛に破れて涙するんですねぇ。
なぜか私の中で恋愛は女子のもの、といういイメージがあったのですが、彼の涙で気付きました。
恋愛に性別なんて、関係ない。
どっちのほうがああだ、こうだなんて、ナンセンスですよね。
恋愛は、人類共通の難攻不落の人生における大きな課題のひとつなわけです。
誰もが、誰かを好きになって、そのことで悩み苦しみ涙するんです。
もちろん私だって、今この文章を読んでいるあなただって同じです。
こんな風に誰にも起こりうる悩み、苦しみを取り除くきっかけづくりをするのが私たち恋愛請負人の仕事です。
身近な友人の涙ですごく大切なことに気づくことが出来ました。
やっぱり、泣いている人をみたら力になってあげたいじゃないですか。
その人が少しでも早く泣きやむように、あの手この手で手助けしたいじゃないですか。
それをプロの視点でやりとげよう、という私たちの仕事は非常に需要があり、そして私たちにもやりがいがあります。
今まさにその目に涙をためている方。
これからの季節ビールもいいですが、その手で私たちに一報くださればいつでも力になりますよ。
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